ODA(政府開発援助)

令和5年10月10日

評価年月日:令和5年9月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 ルワンダ共和国(以下、「ルワンダ」という。)

1-2 案件名

 キガリ市における高度道路交通システム導入計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、キガリ市において、交通管制システムの整備並びに交差点改良等を実施することにより、公共交通を含む市内交通流の円滑化及び安全向上を図り、もってルワンダの経済基盤整備(運輸交通)に寄与するもの。
 供与限度額は、20.09億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限かあるいはほとんどないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ルワンダ(一人当たり国民総所得(GNI)930ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)1994年のジェノサイド発生後、国際社会からの支援の下で国内情勢の安定化を実現してきたルワンダは、近年7%前後の経済成長率を維持しており、内戦からの復興及び経済成長のモデル国として、不安定な状況が続く大湖地域における極めて重要な存在となっている。
  • (3)ルワンダの首都キガリ市では、人口増加及び経済成長に伴う交通量の増大により、主要交差点で渋滞が発生し、経済活動の活性化を妨げており、道路交通事故死者数(2019年)は人口10万人当たり29.4人となっており、世界平均同17人と比べて著しく高い。キガリ市の人口は約174.5万人(2022年、キガリ市役所集計)であるが、2050年には約380万人に増加すると推計されており、これに伴う保有車両台数や交通事故の増加、交通渋滞の更なる悪化が見込まれ、市内における交通渋滞の緩和及び都市交通システムの改善が課題であり、交通管理システムの導入による交通制御の必要性が指摘されている。
  • (4)また、キガリ市は平坦な土地が少なく起伏が多い地形で新規道路整備やレーンの拡幅が困難であり、現状の道路インフラを最大限活用することが求められており、交通管理システムの導入は交通を円滑化させるために効果的である。
  • (5)ルワンダは、国家長期開発計画「Vision 2050」において、経済成長を加速化するために「都市化と集積」を重点分野の1つとし、公共交通システムの拡大、スマートシティの推進、そして近代的で効率的な交通システムの整備を挙げている。
  • (6)我が国は、対ルワンダ国別開発協力方針(2017年7月)において、「経済基盤整備(運輸交通・貿易円滑化・電力)」を重点分野の1つとして定めており、本計画は同方針に合致するとともに、SDGsゴール9「強靭なインフラの構築」及びゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市」にも貢献するものである。また、本計画による日本式の交通管理システムの導入は、2020年12月の経協インフラ戦略会議で決定された「インフラシステム海外戦略2025」におけるデジタル技術活用の海外展開の促進にも合致するものである。さらに、我が国は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を支持するとともに、2022年8月の第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)において、東アフリカ・北部回廊におけるインフラ整備に取り組むことを表明しており、本計画はこうした我が国の重要政策を具体化するものである。
  • (7)ルワンダは、国際社会において我が国の立場に賛同する親日国である。我が国が重視する安保理改革やTICADプロセスにも積極的であり、同国と良好な関係を維持・強化することは我が国の対アフリカ外交にとって極めて重要である。また同国は、近年、アフリカ連合(AU)改革を主導し、民間投資の誘致に積極的であるなど、アフリカによるオーナーシップを尊重しつつアフリカ大陸全体の成長のために協力する我が国にとって重要なパートナーであり、同国との友好関係を一層強化することは外交的意義が高い。

2-2 効率性

 観測交通量の整理・解析により、他ドナーでの整備予定交差点及び混雑が想定されない交差点の対象からの除外、ラウンドアバウトの改良線形・維持などを検討し、先方政府と十分協議した上で対象交差点の見直し等を実施した。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値(暫定)を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 交通混雑時間帯の平均旅行時間が、5.6分から2.3分に短縮する。
    • イ 交通混雑時間帯の平均旅行速度が、13キロメートル毎時から32キロメートル毎時に増加する。
    • ウ 対象交差点全体の時間短縮便益が、2.6億円/年に増加する。
  • (2)定性的効果
    ア ジェンダー別の交通利便性、通行車両及び歩行者の安全性の向上による道路交通事故死者数の減少、キガリ市の渋滞緩和施策の効果向上、イ 公共交通優先システムによる公共交通の定時性の向上、ウ 渋滞緩和により都市交通機能が向上されることによる、キガリ市の経済社会活動の活発化が期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ルワンダ政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)ルワンダ国別評価報告書(2020年度・第三者評価)
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